解説編(紙を用意してください)

紙を用意してください】の解説編です。

さて、皆さんのお手元にはどんな状態の図が書かれているでしょうか。回答の一例をご紹介します。

いかがでしょうか。え?間違っているのでは?と思った図があった方もいるかもしれません。

実際に私が参加したワークでも、お互いの図を見せ合いましょう、となった時にすぐさま3番や6番の図を指して、「丸3つになっていない」と指摘した方がいました。ですが、指示は「3つずつ」とは言っていませんが、「3つだけ」も言っていないのです。3番や6番の図を書いた人には、【3つだけではバランスがよくならない、バランスよくするためには上下に各3つ必要。「ずつ」が省略されているのだろう。】という判断が働いたわけです。

実は、このワークには正解がありません。【指示】は非常に曖昧な指示になっているので、1人1人の出来あがったもの(解釈)が全て答えであり、【人の認識の相違】を見える化したものです。

いやいや、さすがに6番は間違っているだろう。上下と言っているのに左右は不正解なのでは?

いいえ、これも正解なんです。なぜなら、この人は【紙を横向きに使って書いていた】から、縦に並べるとこうなってしまったのです。紙の置き方の指示はしていません。

【紙の】→紙の向きが縦、横など

【真ん中に】→真ん中を目分量にするか、折って見定めるかなど

【正確に】→目分量にするか、定規を使うか、紙を縦に2回と横に2回折って線を定めるかなど

【四角形を】→正方形、長方形など

【その上下に】→四角形の外側の上下か、内側の上下か、紙そのものの上下かなど

【バランスよく】→目分量にするか、定規を使うか、何を基準にしたバランスなのかなど

【3つ】→全部で3つなのか、上に3つと下に3つなのかなど

【丸を】→正円を意識するのか、四角形では言われた正確にがないので適当に書くかなど

ということで、同じ指示を聞いたはずなのに、実にたくさんの回答の方法があるのです。そして、その場における多数派・少数派が生じても、別の場では多数派・少数派が逆転することもあります。

行間を読むとか、空気を読むとか、普通はこうとか、【察する】ことを重視される場面が日常では様々に生じますが、認識の相違はこうも多くあるものか、ということがよくわかるワークだと思います。

では、認識の相違を少なくするには、初めの指示がもっと具体的ならばよかったのでしょうか?そういう点では、法律などは解釈の相違が減るように実に詳細に記載されていると思います。契約書なども長くてそこまで書かなくても普通はわかるのでは?と思うような言い回しがあったりもします。それでも、解釈の仕方を争って裁判が行われています。また、日常の会話でいちいち法律や契約書のような言い回しをして生きていくのは、いささか非現実的に思われます。

つまり、「曖昧さを無くした会話をせよ」ということではなく、「人と人との間には、こうも様々な物事のとらえ方があるのだということを実感しよう」というのがこのワークの狙いです。

更に、共有の場でこの「認識の相違」を目の当たりにしたときに、他人と自分が違うか気にするタイプ、多数派で安心するタイプ、少数派でも他人の方が間違っているだけだろうと思うタイプ、違いに目がいきやすい、同じ部分に目がいきやすい、などと、感情や受け止め方も実に様々に生じます。そういった、自分の傾向と受け止め方を認識することで、今後、日常における認識の相違にどう対応していくかを改めて考えることが出来るワークかと思います。

かくいう私も実生活において、何でこの説明でこんな解釈になるのかなぁ?と他者に思ったことがあります。対人関係において理解しがたい状況というのは、ストレス源でもあります。ひとつの解決方法として、認識の相違が生じた時には、「理解しがたい=相手の解釈がおかしい」と決めつけるのでなく、「この人には、こういう風に思えたんだな」とまずは受止めることが出来ると、「ではどう解決していこうか」と気持ちを早く切替え、ストレスになりづらくなるのかもしれないと思いました。