制作の性質と段階のお話

副園長の野田です。

さて、ブログの更新を再開してから季節の制作のご紹介が続いていますが、今回はたまたま全体の状況とタイミングとして【そういう時期だった】形になります。

というのも、当園はもとから比較的【いわゆる大人が作品として認識するような制作物】は少ない傾向にあります。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

うちはこういう理由でこうしています、というお話って少し繊細なことだとは思っています。

これまでも、今後も、あくまでも当園はこういう方針ですよというお話として記載をするつもりでいまして、何かを批判・否定するつもりはありません。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

そもそもとして、制作って何故するのか?という視点から考えると、(制作に限らず保育として行う全ての活動は)子供達が活動を通して【様々な経験をする】ことと【経験を通して心身の発達を促す】ことが目的だといえます。

絵を描くということを例にあげても、

・何に描くのか→画用紙、新聞紙、半紙、ビニール、木、地面、ホワイトボード

・描く物の大きさや向き→大きい場所に全身を使って描く、小さい紙に微細運動の促進として描く、立てた板に向かって正面向きで描く

・何で描くのか→クレヨン、色鉛筆、鉛筆、ペン、絵の具(手・指・筆)、チョーク、野菜や変わった素材

・発達に関連した要素→点々まで、グルグル描き、筆圧、円が書けるか、円を複数並べて描くか重ねて描くか、色の違いの認識や名前の認知と発語、握り方、手に着く感触、足に着ける、ぺったん(力加減)

と要素が非常に多くあり、組み合わせも膨大になります。

また、この派生として霧吹きで色水を吹き付ける、サインペンで描いて水を付けてにじませる、絵の具を付けた紙を半分に折って開く、などの活動もあり、月齢や安全面、予算など総合的に勘案しながら活動に取り入れていきます。

一方で、子供の多くは「いつもの状態」「知ってること」は安心して取り組めますが、2歳前後のイヤイヤ期は例えそういったことでも一筋縄ではいかない自我との戦いですし、そこに更に「初めての状態」「未知のこと」となると不安を抱きイヤイヤにもなりがちです。

そのため、【様々な経験をする】ことと【経験を通して心身の発達を促す】ことから考えると、新しい活動を導入する際には短時間でまず【知る】機会を設け、やらないとしてもお友達がやっているのを見るなどでまずは【知っている】状態に至るようにします。

【知っている】状態になり怖さが軽減されると、やってみようかなという気持ちが芽生え、やってみた→面白い!となると、夢中になっていきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

新規入園時期は【新しい環境】は日常だけでも不安がいっぱいなので、まずは【最低限の毎日の繰り返し】に慣れつつ、合間の時間に【自分の好きな遊びを存分に出来る】経験を重ね、保育園が安心できる場であると感じられるようにします。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

例えば絵の具を使った制作をする場合も、極論、子供の手をとって保育士が筆で絵の具をつけて、ギュッと紙に手形をして洗っておしまい、先生が見事な作品にしたよ!というような事態になるくらいなら、作品にしなくていいから、時間をかけて子供自身の「たのしい!」「やりたい!」と育もう、という方針にしています。

そのため、まずはクレヨンと画用紙から始めて、頃合いを見てお絵かきしよっかと誘い、興味関心の程度や発達の段階を見ていきます。

絵の具の話なのにクレヨン?と感じるかもしれませんが、握り方、腕や指の動かし方、手が汚れることへの抵抗感、色の認識など、その子がどんな状態にあるかな?ということを見るためにも、いきなり絵の具!ではなくその前段階にクレヨンの活動を位置付けています。(絵の具の活動では手指に絵の具が着くことが苦手でも、筆やスポンジなら出来るという子もいます。ただし、安全面などから筆かスポンジかは発達の状態を考慮するようにしており、その前段階としてクレヨンの持ち方を見ていく、という形になります。)

クレヨンでのお絵かきも定期的に誘うことで「保育園でよくやる活動」に絵を描くという要素が加わった頃合いで、画用紙以外のものに描く(クレヨンはいつもので、紙だけ新しいという経験、大きい紙に描く時は机じゃなくて床なんだという経験)→今日はクレヨンの代わりにこれにしてみよっか!と絵の具を取り入れる・・・となります。

そして絵の具が楽しい!になると、当然に子供達は手のひらや足の裏、腕や脛まで塗りたくり!というようなこともし始め、とにかく自由に好きにやりたい!の時期が訪れます。

その楽しい!を子供達が十分に満たせつつ、大人が「こうしたら【作品】になるんだよ」というきっかけのお手伝いをして、子供自身が【作品を作ったという達成感】や【出来上がりを飾って見て楽しむ喜び】に気付くとき、初めて【作品づくり】のねらいが達成できると考えています。

制作以外でも戸外活動や給食などの身体の発育のため、早期に慣れていく必要のある要素も多々ありますし、新しくお友達が増えた時はもとから園にいた子もちょっぴり不安定になってしまう傾向にもあります。そのため、そういうタイミングでは皆が安心して取り組める自分の好きな遊びや、お馴染みの活動に重きをおくこともあります。

そのため、入園から1ヶ月くらいは毎日の活動が基本的には定番で、いわゆる作品のお持ち帰りは1つもなく、、、ということは普通で、だからといって何もしていないわけではなのですが、中にはちょっぴり心配になる方もいらっしゃるかなとは思っています。

ちょうど今年は夏頃がこういった新規入園の続いた時期でもあり、お盆休みなどで不安定になりやすい時期でもありましたので、そこはじっくりと種まき時期として子供達と過ごしてきました。

コチラはその種まき時期にゴーヤと絵の具で遊んだ時のものです。

最終的には下に敷いたビニールシートに絵の具をたっぷりと塗りたくって盛り上がっていました(笑)

この活動の延長上に、先日のエアパッキンにペンでお絵かきをしてみる(コチラ→プチプチ遊び♪)などがあります。

そうして様々な新しい活動へのドキドキも和らいでいる様子や、「できた!」「かわいい!」「またやる!」の喜びが多く見られるタイミングで、同じく種まき時期にちょこちょこ取り入れていた【粘土遊び】を活かした制作にも取り組みましたので、次回はそちらをご紹介できればと思います♪

園の様子

次の記事

うんどうかいごっこ